タイからの提言 -海外日本語教育のあり方①-

   海外では、日本のマンガ・アニメをきっかけとした日本語学習意欲が若い世代を中心に高まっています。現地学生の日本語学習意欲にどう応えていくのか、政府・民間ともに知恵を出し合わなければなりません。

   クールジャパン戦略や訪日外国人2000万人目標が論じられる今、タイの高校・大学で単身、日本語教育に取り組む日本人ボランティアの視点から「海外日本語教育のあり方」について発信していきたいと思います。


「タイからの提言-海外日本語教育のあり方-」

NPO法人日本タイ教育交流協会理事 廣瀬正和

(タイ・シーサケットラジャパット大学日本語教育ボランティア)


日本語教育の実態について報告します。

これはあくまで私個人が聞き、見た実態で、違った情報もあるかもしれません。   


   イサーン地域の日本語教育については、この大学もそうですが、学校としては喉から手が出るほどネイティブな日本人教師が欲しいのです。しかし、日本人教師の数は本当に少なく、居っても殆どがボランティア精神で来ている人が多く、日本政府がバックアップする姿勢も余り見られないのが実情です。たまに、教科書や教材を贈ってくれたり、スカラーシップで学生を一人二人、期間(1年位)を定めて留学生として日本に来させるぐらいが政府のとっている姿勢です。

   これに比べて、中国語は、中国政府の肝いりで、官費で教員を派遣し、学校にも教育費と称して資金を出しており、ある学校、第一外国語に中国語を指定したところもあると聞いています。また、派遣された教師は、住宅、給料などは優遇されているようです。

   韓国でも、この大学は、韓国語科はないですが、政府より派遣された先生が一人、長期滞在をしており「人間、社会工学研究と称して時々講義をしているようで、彼は豪華にホテル住まい(勿論、実費は政府持ち、給料は韓国教師待遇優雅な生活をしています。

   ですから、日本語に関しては、一般的に受け入れる学校自体、予算が少なく、ボランティアの色彩が非常に濃いです。

私も大学の近くの高校から懇願され週1回教えに行っています。(大学も私が無給のボランティアであるので許可しているでしょうが)

   現状ですと、仕事として日本語教師をするのは、難しいでしょう。月給2万5千~3万バーツ位が相場で、月に手元に残るのが1万5千~2万バーツ位でしょうか。

   待遇から入ってしまいましたが、語学教育実態は、各学校とも英語をまずトップに力を入れており、次に日本語と中国語が競っているところです。でも、町の人たちや食堂のおばちゃん達は、日本語にかなり親近感をっており(これは真面目で勤勉な日本人先駆者のお蔭だと思います)日本人と分かると「おはようございます」「ありがとう」と片言で挨拶してくれます。

   この大学(マハー・ウィタヤラーイ)の例で実態を報告しますと、学生達はレベルの差が非常にあります。高校(ウィタヤラーイ)で勉強した学生と大学へ入ってから勉強する学生とを一緒に教えるのは、非常に無理がありますが、タイ人の先生方は無頓着に教えています。例えば今年の新入生は45名でその内半分が日本語の読めない学生です。

来期からは二クラスに分けて教える方が、双方とも進歩すると思い提言してますが、どうなることやら・・・。それと問題は、教えるカリキュラムの内容が、きっちりと決まっていない点です。

私自身、此処へ来て、読解、作文、ビジネス日本語を教えるように講座を組み込まれましたが、教材は、決まっていなくて、適当に日本語教育の本から抜粋して、教材を作り教えているのが実情です。

   でも、確実に日本語学科の学生数は増えており、現在、3年生5名、2年生24名、3年生45名となっており、4年生の人数は分かりませんが、実習で高校の日本語教室に教えに行っています。(つづく)

SNSでの広報活動に、

ご協力をお願いします。